W.F.S.的なLA生活

ワイン、フード、スポーツを愛するロサンゼルス在住者Ritzの日記

「金融破地獄―小説・日本債券信用銀行」 杉田望 (著)

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Ritzが大学新卒後に入行した銀行をモデルにした暴露小説。日債銀はバブルの頃は学生が憧れる長信銀の一角で、若々しくてスマートなイメージがあった。だから同期にも東大、京大を始め、有名大学の学生が揃っていた。

私は銀行業務に興味を覚えられなくて、同期入行組のトップを切って、バブルが弾ける前に退職してしまい(笑)、その後の悲惨な状況は知らないのだが、90年代後半には重役が逮捕されたり、頭取が自殺したりといったスキャンダルは聞いていたのでいったい、どういう経過でこのようなことになってしまったのだろうかと疑問に思っていた。

読んでみると、結構、綿密に書いているので、著者は日債銀出身者かと思ったが、どうやら違うらしく、業界紙の編集長だったそうだ。

さてい、この小説は銀行建て直しに日銀から送り込まれた東郷重興氏をモデルにした「清成繁」の奮闘を描いている。結局、清成の奮闘努力にもかかわらず、土壇場で債務超過判定が下り、国有化されてしまった。しかし元はと言えばバブル期に君臨したバカ頭取らのメチャクチャな融資が元で、不良債権の山に囲まれてしまったわけだ。

ところが時効や死去したために、このバカ頭取らは責任を取らされることもなく、金融システムを守るというお題目のために膨大な国民の税金がつぎ込まれ、結局は孫正義のソフトバンクらにわずかな金額で叩き売られてしまう。

とにかく内容は問わずに「数字だけ何倍にしろ」というバカがトップにいたばかりに何十年にもわたって積み上げてきた銀行の信用や資産をわずか数年のうちに失い、顧客、社員、国民にまで多大な負担を強いたわけである。


ま、当然のことながら、こんな状況では、Ritzが辞めたあとも、同期も次々に退職してしまったようである。

それで現実も小説上も、東郷=清成らは不良債権隠し(損失額の過小評価)をしたということで告訴され、有罪判決をくらってしまう。実際には不良債権隠しはどこの銀行でも行っていたし、そもそも不良債権の実際の価値を測るというのは、非常に困難だし、主観的な要素で大きく左右される。だから、どこの銀行も少しでも良く見せようと、楽観的な数字を出すのはアタリマエのことのなのである。

実際、日債銀も不良債権の査定額については、大蔵省とそれなりの合意が形成されていたらしい。それにもかかわらず、政治的な要因も絡み、ある日突然「やっぱりオタクの債権評価額は甘すぎる、債務超過だ」と言われて全ては水泡に帰してしまった。だから東郷らのケースは気の毒というか、非常にマレな事例だった。

ちなみに、実際に逮捕された3人のうちの1人は、確か私が就職した時の人事部長だった。そんな悪い人には見えなかったので、少々心配していたのだが、実際にはこの訴訟は最高裁まで行き、昨年逆転無罪となっている。しかし、この方、今月3日にお亡くなりになったそうだ。この人もバカ頭取の犠牲者だな。一生懸命やった結果が、ひどい晩節になってしまった。せめて死ぬ前に無罪になったのが救いだろう。http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0301W_T00C12A8CC0000/


小説の中で、清成の娘が「もともと朝鮮の銀行だったのを、朝鮮の人(孫正義)に返すだけなんでしょう」というセリフが、私の印象に一番残ったな。私などは銀行設立の事情もよく知りもせずに入行していた。勢いだけの就職活動(笑)

振り返ると、私はあまり就職というものを真剣には考えていなかった。そのままサラリーマンで一生を終えるつもりはなかったし、「いつか独立する時に、金融の知識があれば、いろいろと役立つかもしれんな」くらいの気持ちだった。学生の頃は、何をやっても自分は成功できるという根拠のない自信はあったんだなあ。あはは
  1. 2012/08/13(月) 00:23:39|
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鹿児島出身、10月21日生 血液型B型
1995年よりロサンゼルス在住
システム・インテグレータ兼ワイン・アドバイザーとして過ごす毎日
趣味はゴルフとワイン
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